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風が強く吹いている 小説で映画で 感動をもらう

いい作品に巡り合った。「風が強く吹いている」の劇場映画を見てきた。早く鑑賞に行かなければ封切り終了になってしまうかもしれないので、あわてて日曜日に行ってきた。よかった、よかった、本当によかった。2時間10分があっという間に過ぎていった。青春時代に誰もが経験する、打算のない純情さや仲間を得た時の高揚感が見事に再現されている映画である。ボクにとっては素晴らしい映画だ。
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原作を読んでいたので、つい原作との比較をしたくなる。この映画は原作に忠実ながら映画用にも良いリメークをしていたと思う。原作本での丁寧な描写は小説だからできること、直接目に飛び込んでくる映画では、微妙な解説的な言い回しや複雑な情景描写は不要であり、簡略化された方がスムーズに心に入ってくる。それは、冒頭にシーンにも表れた。小説では、大学に入学したばかりの走(カケル)が、手持ち金もなくなりパンを盗んで駈けていくシーンで始まった。そして、偶然通りかかった4年生の灰二(ハイジ)が自転車に乗って追いかけるものの、窃盗の犯人を捕まえるのではなくカケルの素晴らしいランニングフォームに見入り、その才能を見込んで、自分が寮長的な下宿「竹青荘」に連れてくる。

これが、映画になると、冒頭の食堂でハイジとカケルの食事シーンから始まった。ハイジは突然、カケルを食堂の外に誘い出し飛び出していく。無銭飲食だ。それを捕まえようと自転車で追いかけてくるのは、食堂の可愛い娘さんだ。これは、カケルの走力を見極めようとハイジが、わざと仕組んだ無銭飲食シーンになっていた。可愛い娘もハイジが依頼した演技という設定である。映画では盗人をする主人公の設定はよくない。映画の方が自然な導入だ。
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そして、寛政大学陸上競技部合宿所である「青竹荘」での生活が始まる。個性的な10人が小説では描かれており、その設定を理解するのに手間取ったが、映画は簡単である。目から10人の個性がすぐに頭の中に入ってくる。

この映画の見所は一杯あるが、やはりカケルの走る映像の美しさである。本当に5000mを13分台で走るような綺麗なフォームである。それを映像担当者がより綺麗にとらえている。他に9人の走るシーンも綺麗に違和感なして描かれている。走りのスペシャリストではない俳優10人にとっては、地獄のようなランニング練習があったことは想像される。走るボクにとっては、こんな映画に出演させてもらって、フォームを矯正してもらいたい気持ちが出てきた。

そして、箱根駅伝の予選会、本番の実写も取り入れた映画が進行する。どこまでが実写で、どこからが映画撮影なのかもわからないくらいである。一人ひとりの箱根駅伝に対する思いや、寛政大学陸上競技部の10人の仲間の思い出が箱根駅伝を疾走シーンに挿入されていく。走ることへの限りない思いが伝わっていく。走ることの目標は「速いことではなく、強くなることだ」という、この映画、小説のテーマが伝わってくる。

ボクにとっての映画は、鑑賞後の高揚感や充実感を感じさせることだと思っている。この映画は、鑑賞後も気持ちがいい。若いって素晴らしい。頑張ることは素晴らしい。走るって素晴らしい……そんな映画だった。走ることの好きな方なら是非、映画館に足を運んでください。こんな映画もあるなんて新しい発見ですよ。
by hyocori-hyoutan | 2009-11-16 23:30 | movie