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下駄を鳴らして奴が来る ボクの青春 今思い出す(26)

2回生になったものの1回生の終わりの3月頃から腰の調子が悪くなっていた。整形外科に受診すると椎間板ヘルニアと診断された。走ろうとしても急に脚に力が入らない。朝起きようとしても脚がしびれて起きられない。仕方なく整形外科に入院をした。腰にベルトを巻き、そのベルトに紐を取り付けてベッドの足元の貨車に紐を通す。ベッドの端には砂袋がぶら下がっている。一日中寝ていて腰を牽引するのだ。約一週間ほどの入院でやや回復した。

そして、2回生として応援団の練習に再び加わったが、腰の具合は練習を重ねるにつれて悪化していった。下宿でもベッドに砂袋を結びつけて牽引をしたが、一向に良くならない。整形外科に通院して電気治療をしても効果はない。とうとう応援団の練習が出来なくなってしまった。体力や自分の心の弱さで部活ができないのではなく、病気のために練習ができないのはつらいものだ。

だんだん悪化をしていった。朝の目を覚まして立ち上がるまで一時間もかかる。しびれた左足を床につけると電気が走る。少しづつ体を横に向けて背中を丸めたままに起き上がる。一度起き上がってしまえば楽になるが、起きる時の痛さに耐え切れなく、椅子に座ったまま机に伏せて寝るようになっていた。この痛さから解放してくれるなら片足を切断してもいい…と思いこんでしまう。そして夏休み前の合宿にも不参加することの了解をもらって実家に戻ることにした。学生アパートの部屋を片付けて熊本駅に向かう。バスの上り降りも苦痛なので、タクシーで駅に向かう。

「熊本駅までお願いします」
その一言を言ってしまって後はタクシーの中は沈黙が流れる。大学に合格して1年3ヶ月が経過したが、このような形で実家に戻るが悔しかった。無性に涙が流れてきた。いつ治るかわからない、もし治らないならどうしよう…。ボクの大学はこれで終わりか…悪いほうへ悪い方へ考えがいってしまう。つらい帰省の旅であった。

そして、実家に戻って大学病院で診察を受ける。病名は変わらず、完全治癒を求めるならば手術しかないとのこと。成功率は90%、残りは10%は病状が好転しない場合もある。決断は早かった。脚を切っても痛みから解放されたい!だから手術を選んだ。大学病院はベッドが満床であったので紹介をうけた城南区の病院で手術を受けることになった。

7月上旬に入院して、その一週間後には手術があった。局部麻酔だから意識はしっかりしていた。手術中の医者の声も耳に入る。執刀医は2人であったので、世間話をしながら手術は進んでいく。執刀医が雑談をしながら手術をしてくれるのは、ある面では心強かった。真剣にするのでなく余裕のある手術みたいであった。それでも2時間くらいの手術時間を要した。これで、ハリを刺すような痛みから解放されるのであれば嬉しいものだ。そして麻酔が覚めていく。もちろん術後のもうひとつの戦いが始まる。
by hyocori-hyoutan | 2010-06-07 22:59